ハマグリ(蛤)/アシタバ
河原でハマグリを焼いた
たった一人で
誰にもらったか覚えてない
買った記憶もなかった
まだ食べてみもしないうちから
香ばしさが口中にひろがった
煙ばかりが立って
貝はなかなか開かない
河の水面が盛り上がって
黒牛の背中のようだ
白い和服の立ち姿が
向こう岸でちらちらした
その足もとからも
細い煙が立っている
空腹は感じないのに
すごく苛苛した
ハマグリのからは閉じたままで
煙ばかりが立っている
死んだ貝のからは
開かないのだと
誰かに聞いた気がした
仕方がないので
無
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