バス停/アシタバ
あなたは迷うように見上げた
今日の散光を苦い舌でなめて
長い午後を霞ませる問いかけに
指がわずかに答えようとしかけたのを
隠すみたいに柔らかい拳にして
立っていた
そのすぐ隣でバスの発着時刻の数字が
反古の侘しさが映る白のうえで
消えかけていた
あなたの背後で
建物の立ち消えたままの空ろが
間に合わせに身を繕おうとした
ほつれた布のような金網を
風が口笛を鳴らして嘲りながら通っていった
その風にいくつかの名前を与えてやる
ひとつひとつが独特の震え方で
時刻表の数字を滲ませる
バスが来るまではまだ大分待たなくてはならない
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