戯れ言2/美味
 
1.

美人薄命
という言葉を知っているが
私の母は、けして
美人ではなかった。
そして、私もそうではない。
人の死はそう易々と
語れるものではないことを
私は知っている。


もちろんだけれど、
今も母は生きていて
元気にやっていますよ。


2.

私は走る
ねっとりとして喉に
張り付くつばを吐き捨てて
馬鹿みたいに走る
私を待たない時間に
追いつく為に
口の中では
微かに血の味がする


3.

フルーツバスケットをやると
私はいつもライチを選ぶ
誰も呼んでくれないので
一度も立ち上がることは無い
そういう時間に
はしゃぐ皆を見ているのが
私の楽しみであり
フルーツバスケットが好きな理由だ


4.

髪が濡れたのは
たった一度のあの日だけ
それ以来
雨が降っているときは
必ず傘を差すようになった

あなたのおかげです

と、一度だけ言っておきたかった



戻る   Point(3)