殺意、カシスグレープフルーツ/a.u.i.
いかに難しいかを知った 17
覚えたての数式が無意味に人をえぐろうとしている
まさに、今
あのときいったい何ができたのだろう、私に 私たちに
そうして瞬きひとつ終えて目を開くと
あそこの鳥がもうここにいて
せめぎ合う私と高層ビルとの落差を埋める手立ては
この街にはない
いつも制服のリボンは変わらずワインレッド色をしていた
底のない赤ワインで溺れ死にたい。
そういう類の殺意が、私の瞳孔を赤黒く染め上げる
落ちるときまで手を離さずにいられますか?
校舎から垂れ流す、3時限目
飲み残したカシスグレープフルーツ
先生の答えられない難問
あれが地にたどりつくまでに私も共に落ちよう。
このカクテルを教えてくれた人のことが
さっと頭を過ぎった
遅いんだよ、
少し笑いながら
右足を、空へ
雨がさっと悲しみを洗う
落ちようと決めた 17
街は夕刻 カシスグレープフルーツ色
母の声がほしい
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