出航する三月/プテラノドン
 
今日さっき、大海原に出航した私を 
海賊達ははなっから相手にしなかった。
あっちに行けと、手の平をひらひらさせるだけ
かねてから、船という船を海に沈めてきたという砲台は
一応こちらに向けられていたものの、そこから
飛び出してくるのは、食べかすと空っぽの酒瓶だ。
「ひどいじゃないか」と私は彼等に言ったが
「さっさと、帰った方がいいぞ」と彼等は言って
ものすごいスピードで船を進める。そして笑い声とも
罵声ともとれる叫び声を上げながら―それは餌に群がる
海鳥の鳴き声と混じって何を言っているのか
分かりゃしなかったが、少なくとも海鳥は今夜、
私の耳のなかで眠りたがっていた。
もちろん、旅を終える頃に私の耳が
鳥かごになっていてもおかしくないし、その中に
未知の生命が溢れかえっていてもいいのだ。
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