猫/アシタバ
 
冷えた月光が酔い痴れ
猫が舌なめずりをしている
木枯らしが掃き溜めた暗がりで
誰かの影を踏んだと驚き
見返れば
巨大な墓石が黒々とつらなるあたり
茫として仄明かりに白む天蓋
一閃の流れ星と見えたは
郊外へと走る列車の窓明かり
掃射銃の火花を散らすごとく
物々しくも通り往く
撃たれたわけでもなかろう
芝居がかりの尻餅に崩れ
瞬く間に口蓋より響きを発す
無明の汀にては酔いも知らず
ただ猫に変じたさまをいぶかしむでもなく
軽々と躍り獲物を追う一念のみ
一羽の鳥の羽根を散らして銜えるに至り
ミャーでは勝ち鬨らしくもないが
いつの間にその懐には
一匹の猫が潜りこんで温もりを分けている
猫が眠るころ夜は明けていた
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