雷造じいさんへの手紙/服部 剛
 
一月前 
長い間認知症デイサービスに通っていた 
雷造さんが88歳で天に召された 

だんだん体が動かなくなり 
だんだん独り暗い部屋に置かれる時間が多くなり 
ある日ベッドで瞳を閉じて横たわる雷造さんに 

「おはようございます・・・! 
 もう少しで春ですね 
 またみんなでお花見しましょうね 
 雷造さんを、僕は忘れてないからね」 

一声かけただけで 
雷造さんは赤ちゃんに戻り 
ベッドの上で身を震わせて 
「ひとりにしないでくれよぉ・・・」と
おいおい泣き始めた  

雷造さんの痩せた肩に 
僕は黙ってそっと手を当てた 

雷造さん、 
お葬
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