「春」/ベンジャミン
 

眠りの中の妖精が
いつもと変わらぬ朝日を受けて
目覚めの呪文をささやいた

自然界の法則が
その
方向を示すとき

風は一目散にかけてゆき
草木を揺らし香を運び

命あるすべてのものに
その
訪れを告げてゆく

寝ぼけまなこの妖精は
小さな杖を振りかざし
さかんに強く呼びかける

土に隠れた青い芽に
底を泳ぐ魚たちに


世の人々は
そうとは知らずに何気なく
ふと空を見上げるでしょう

いつもと変わらぬ青い空

誰かに呼ばれた気がしても
そこで歩みを止めはしない

ただ

何となく上着を脱いで
袖をまくって

誰かとすれ違う時に 
それとなく確認しながら

何となく話題にする

その頃にはもう道端に
さりげなく
けれど凛然と

咲く花もあるのです

     
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