目 眩 (めまい)/水無瀬 咲耶
 
草の香りに 身を潜ませ。
振り仰いだ青の おそろしい深さ。

アレハ なつかしい歌うせせらぎ。
この空の対岸から美しい音色が来る(と思う)。

ココハ 天のほとり(きっと)。ずっと。
微かな物音に耳を澄ませる。
じっとりと汗ばむ手で鼓動を握りしめ。

(( 吸い込まれぬよう ) ) 
     ( ( 魅入られてしまわぬよう ) )

水脈に熱を悟られてはいけない。
言葉たちハ 素知らぬカオで通過する(カラ。)

折からの風に 桜色に舞い散る淡い花びら。

何時の日でもない いつか。
やわらかな破片が心に鎮まるのを待っている。

永遠の背骨を片手で辿りながら。



 
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