sir,natrium_sanatorium : 0/人間
私が育てたサナトリウムの
前庭の小さな丘の上に置かれた
半分朽ちた木製の椅子に
座っているのは私の父さんです
消し炭の鳥がうまく滑降して
門の上から同情を呼び寄せます
五分ですか?半年ですか?時間が無い
清掃員が撃ち落として遺体から朝が這い出ます
”羊”と”棺”の発音が
うまく出来ない父さんに
メリーの”棺”の童謡を
うまく聞かせる自信が無い
チアノーゼした空に真緑の頬寄せ
母のような大樹が深く覆う枝から
落ちる広い葉は影を伸ばして
表も裏も忘れています
ギシギシする私の父さんは
玩具の吹き戻しを鳴らしながら
亡くした官能を呼び寄せます
抜ける
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