岬の家/篠有里
 
誰も知らない、枯れた岬の先にある
空の灰色、朽ち葉はゆるゆる風に流れて
腰まである草をかき分けつつ、私はその館にたどり着く
白いペンキはくすんで剥げ、ステンドグラスは割れている
日本人が西洋に対する憧れを込めて建てたようなその館
十九世紀式後半アメリカ郊外型住宅、を模したもの
しかし誰が、誰に対して、何を期待して、このようなもの

館に至るまでの道はなく、断崖に打ちつけるのは深緑の波
ノッカーをカツ、カツ、カツと律儀に三回ならして、
あるわけもない在宅の有無を内部に問うが、
そうする事の意味は、すべて私の個人的理由に回帰する
心のひだの柔らかい部分の外周を縁取る、白い鱗状組
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