海へ/まんぼう
灯台へ向かう道は
何箇所も工事中で
ガードレール代わりに
細い鉄パイプが括り付けられ
細い海峡に似た入り江は
冬の日差しで満たされる
今日
君は黙り込んで
売り払った車と
明日のことを考えている
灯台の石造りの窓から
水平線が二重に見えるのは
蜃気楼ではなく
海から押し寄せる吹雪のせいです
沖からは漁船が
追われる子供のように
帰って来ました
渦巻く吹雪の中で
ギラリとひかるのは
謀殺されたおろちの眼光です
神々のどよめき
海の光と灰色は
太古の稲妻や雲の残像です
プラスチックのコップで
お茶を飲みながら
並んで
海を見たのです
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