夢の国のアリス/独白/渡邉建志
たぶん夢なんだわ、わたしが夢の中にいるのかしら。あの人が夢の中にいるのかしら。なんだか中国の話にそんなものがあったわね、胡蝶の夢だったかしら、『荘子が蝶となり百年を花上に遊んだと夢に見て目覚めたが、自分が夢で蝶となったのか、蝶が夢見て今自分になっているのかと疑った、というお話』、なんだかフォーレの歌詞のよう。それともフォーレのお菓子?いえそれはアルフォートだわ、関係ない、関係ないわね、でも、ああ、わたしが憧れる蝶になってしまって、夢のようなあの人のまわりをくるくるととびまわることができたらいいのに!あの人がそのことにまったく気づかないまま、右の手の甲にとまって羽を閉じることができたなら、わたしはそのときこのまぶたを永遠に閉じてしまってもいいわ!」
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