溜息とひとりごと/夕凪ここあ
カーテンの外で
もう明日が始まっている
私は今日すら消化できないまま
部屋の中で立ち止まる
こんなに簡単に
昨日は手に入るというのに
狭い部屋に溢れかえって
いつまでも抜け出せない
言葉を棚に並べてみたら
丁度君との思い出の数になった
意味だけが底から零れ落ちて
これでは抜け殻だと
あと一つ言葉を知っていたら
あの時計は動くのですか
聞いたところで
誰もいないこの部屋の中でひとり
試しに「 」を
呪文のように言いかけた
空のひとりごとが
空気になってやがて消えた
最後の一欠けは飲み込んだ
昨日までもが遠ざかる気がした
代わりに吐いた溜息が
出口を探したが
もうあるべき場所に
扉はなかった
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