さよならをうたう少女のお話/夕凪ここあ
 
うたをうたう さよならのうた
少女がうたうさよならは
やがて風になる
吹き抜けては行くけれど 
誰にもうたは聴こえない
今日もうたう少女はさよならを履いて
終わりに流れついた誰かのもとで
うたをうたう さよならのうた
優しい風が生まれて
心地良く やがて眠りにつく
眠りについて 消えていく
風をはらみ 昨日に還る
少女がうたう間に
ひとり またひとり 還る
少女の履いた初めましてのさよならを
覚える人はどこにもいない
二度と同じ人に出会うことはないし
初めて会う人はやがて終わる人だったから
少女はひとり
泣くことも許されずに
絶え間ないさよならにうたをうたう
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