錆色小石/銀猫
 
私鉄沿線のダイヤに則り
急行列車が次々と駅を飛ばして先を急く

通路を挟んだ窓を
横に流れるフィルムに見立て
過ぎた日を思えば
思わぬ駅で乗り降りをしたわたしが映る


網棚に上着を置き忘れ
戻らなかった温もりを
反芻してみたり

ぼんやりして
傘ひとつ
見知らぬ駅まで旅をさせたり

些細な日常は
ひとり勝手なドラマ仕立てだが
わたしの歴史を辿る者は
わたししかないだろう


ここより先も風を孕んで急く
レイルの小石を跳ねてゆく

姿の無い魔物に追われながら
ささやかな宝を求めて
残る生命のうちに
叶うか叶わぬかの夢



今日は二十分の旅路で
映像を巻き戻してみた


相変わらず
空の三月に
半熟卵の月が掛かっている

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