藪の中の靴/プテラノドン
こんな所に 靴を置いていったのは誰だ?―
道路脇の藪の中に くたびれた革靴が転がっている。
そこに一台の霊柩車が止まり、棺桶の中から少女が現れる。
彼女は靴に足をすべり込ませたが、いささか大きすぎた。
「世界は真っ暗だわ」と、少女は呟いた。それからすぐ
両足をぱたぱたさせながら笑い出す。表情は見えない。
彼女の身体は、靴の中にすっぽりと隠れてしまっている。
年老いた運転手は「どうか―!」と、私のすねにすがり付く。
泣きわめく彼を、もう片方の靴に放り投げた私は
自分の靴を脱ぎ捨て、全部お終いにするつもりでそこに
足を入れた。
雨上がりの道路。ぬるい夜風が水たまりを震わせる。
彼等は夜風かもしれない。彼等は足をくすぐるのが上手だったし、
私は必死に笑いをこらえていた。
私は歩き出す。藪の中に 靴を置き去りにしたまま―
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