二つ折りの想い/夕凪ここあ
机の下や冷蔵庫の隙間を覗く君は
何を探しているかと思ったら
明日を探しているの、と
今にも泣きそうな声で言った
いつか君が泣いたとき
心こころこころと
君は三回祈るように囁いて
気持ちを落ちつかせていた
そんなに無理しなくてもいい
と抱きしめた体はあまりにも弱々しかった
君がベランダで洗濯物を干している時
いつも君はそれに混じって
洗濯物になりすましていた
こうして風に身を任せているととても気持ちいいの
といつもの笑顔で話す君は
あの日空に溶けていってしまった
これからは
ベランダで一人洗濯物をとりこみ
泣きたいときは心こころこころと唱え
寝るときは羊を数えよう
朝起きたらおはようと部屋に声をかけ
背伸びはしないように
隙間に挟まったままの明日を探そう
ひとりで、
ただ想いは言葉にするのはよそう
閉じ込めないで空に放そう
丁寧に二つ折りにされた
君の想いの紙きれが
机の上に一枚残されていた
決して色褪せないまま君の想いが
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