未完の夜/岡部淳太郎
 
書けなかった詩の断片が
ちぎれた草になって

風に舞っている

いのちは永すぎる未完
死してなお
始まりにさえたどりつけない 未完

私の夜はいつもと同じ旋律を
内側の街路にまきちらしながら
穏やかな騒霊となって
鎮まっている

風が舞っている

私の草がちぎれて
昏いままで踊っているのだ
誰にも知られることなく

いのちは永すぎる未完
その始まりさえない鼓動の中で
詩は書かれながら
書き終えられながら
なおも未完

書けなかった詩も
書き上げられた詩も
すべての詩が
ちぎれた草になって

風に舞っている

窓の内部で
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