肺に混じる雑音/フユキヱリカ
[hi−fi]
咳をしたあと
ひゅう、ひぅ と、
咽喉が鳴るんだと思った
きみは 背を震わせていたんだ
いつもそうやって
シーツのなかでつま先だけが冷えるから
それから眠れないでいた
あの夜、窓を叩いた枝が
葉を繁らすころ
皮膚の匂いが濃くなるのを嫌った
僅か残すばかりの線を
知るのを急ぐように
の、を急ぐように
原音を忠実に再生する
私を見てわらう
hi−fi
噛んだ唇をわらっても
その目を睨み返したことも
てのひらをぎゅっと握り締めたことも
おとなになればわすれるのに、ね
また泣いていたの?
そうじゃな
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