沈丁花/LEO
あまくたゆたう
切ない香りは
匂いを纏い
瞼を閉じて
春の記憶を
捲ってみれば
ぼんやりと
聞こえてくるのは
あなたの足音でした
あの細い小路を
覚えているかしら
先いく背中を追って
ふたつめの角を曲がれば
いつもそこで
あなたが待っていた
沈丁花に
顔よせながら
そんな些細な喜びに
背中を追うのが楽しみで
時の去るのが恨めしく
あなたの背中を
いつまでも
微笑むあなたは
いつまでも
小路に刻んだ
ふたり季節の足音は
そればかりではないのに
沈丁花の香りが
強すぎたのでしょう
春が来るたび
匂いを纏うわたしは
あなたの背中を
探してしまうのです
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