8mmフィルム"E"/人間
 
何かのサイレン その低音域に化粧した夜
まさに 夜そのもの
発電機のような猫から漏れる喘ぎ鳴き声
まばたき またたき またたび 眩暈で繋ぐ命も揺らぎ
街灯の嘔吐する光 は景色 を八つ裂き にしてパスタ状に絞り出す
70年代ブルーフィルムに似た平べったさの中には
清掃員や立ちんぼ男娼が安タバコの煙を混ぜ合いながら
時間や暇や退屈の芽を潰して いて
これから続く 淫靡な 不埒な 低音域の物語を予感させたまま
あらゆる観客は眠りについて いて
何かのサイレン

 そういう夜に限って 部屋にひとり私

私の頭頂骨の裏側には クロム製ヒキガエルが張り付いて いて
今まで犯したあ
[次のページ]
戻る   Point(1)