壁  デッサン/前田ふむふむ
 
付いたら、
僕はその二重の層を 過去と、現在と、分けて慎重に剥がしながら、空気の壁と壁の隙間を、危うい足取りで歩いている。
   *****
朦朧とした乾いたひかりの中で。

死んだ父さんが、川のむこうで母さんと妹たちと
一緒にいる。
暗闇の前にある強いひかりをめざして歩いている。
危ない、母さんが疲れて倒れそうだ。
いや、大丈夫だ。あれは父さん、父さんが泣きながら、後ろから力いっぱい支えているんだ。足元が覚束ない、生きているみんなを精一杯支えてくれているんだ。
僕も行かなくちゃ。
父さんも一緒に、行くんだ。
家族みんなであしたの未来に、行かなくちゃ。

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