壁 デッサン/前田ふむふむ
寂しい川面をゆく鳥たちが泣いている。
呼吸する都会の爛れた果実の奥で、生きる者の哀しい涙が漂っている。
世界の涙の尖塔が、青い空を突き刺している。
時間の感覚すらない。呼吸している感覚すらない。朦朧とした乾いたひかりのなかで。
越えられない高さで、内部を見られない。涙の結晶でできた頑丈な壁が聳え立っている。それを囲んだ道が円を作り、壁の内部に向かって渦巻状に進んでゆくが、無限で終わりが全くない。
僕は、絶え間なく、得体の知れぬ世界を空想して、ぬるぬるした苔類が繁茂した壁を、よじ登ると、そこでは、近代の日本画の絵のような葬儀が行われていた。
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僕は少し告別式の時間に遅
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