【 忘春 】/豊嶋祐匠
 






















ある梅雨の夕方

濡れながら駆け込んできた彼が

握りしめていたのは

あの日プレゼントした

家族割引の申込書






ひとり暮らしと言っていた

彼が書いた申込書には

いつも私が押し慣れた

親友の携帯番号がありました






おめでとうございます






それが私の

彼への二度目のお祝いと

さよならの言葉に、なりました。














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