【 忘春 】/豊嶋祐匠
 
















携帯電話の

お客さまと知り合って

それが、彼との出会いでした






不器用そうな彼の

問い合わせも

私には

恋の告白のように聞こえるのです






春を迎え

逞しいスーツ姿の彼が言う

就職の話題に

おめでとうございますと

精一杯の笑顔で返す、私






それでも

私にできるお祝いは

家族割引のご紹介くらいで

いつか助かりますと

喜んでくれた彼の言葉に

期待を込めて、胸を撫で下ろす




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