さびしい海辺の光景/前田ふむふむ
 
石の階段を上がり、土手に登ると、そこに、茫洋とした冬の暗い海が、厳しい様相を露出して生きていた。寄せて来る波が鋭い岩肌にあたり、砕けては、多くの白い泡の残骸をつくり、あらあらしく引いては、ふたたび波は岩に挑み、また、砕け散る。繰り返される自然の闘争のしぐさ。それは、諦めることを止めない、人間のこころの内部へ、たえまない執着を塗りこんでいる、卑屈な日常の儚さを滲ませて、憐れなほど悲しい。


片方の羽根が傷ついた海鳥よ、
おまえは、なぜそんなに悲しく泣くのか。
岩に休んでは、ふらふら飛んでゆく姿は、
わたしの歪んだ縮図。
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