桜子/銀猫
 
春が

     はるが

傘の水滴に溶けて
声も密やに
幼いまるみの春の子に
子守唄を聴かせる


まだ固く木肌の一部の様子で
繚乱、を隠した蕾は
雨にまどろみ
陽射しに背骨をつよくして
空の号令を待っている


桜が

     さくらが

紛れも無く
祝宴と
小さな砂混じりの風を呼んでいる
風は空色を待っている


髪上げ初めし愛しい額のうえに
瑞々しく春の産毛を輝かせるおまえを
わたしは待っている

まって いる

戻る   Point(21)