わたしはきらいだ/ZUZU
人ではいたくない。
わたしはかけっこが好きだ。
幼稚園の運動会のかけっこはいつも感動的だ。
おっきい子もちっさい子もころぶ子も。
泣く子も親も先生も。
みんないっしょうけんめいだ。
一等の子もえらい。
ビリの子もえらい。
一等でもビリでもなかった子もえらい。
おっかしな走り方で、どたどたと、
女の子にびゅんびゅん追い抜かれながら、
いっしゅう遅れのリレーを走る男の子などをみると、
なんだかわからないが、涙が出そうになる。
わたしたちは平等ではない。
オンリーワンだなんてうそっぱちだ、
みんなただの子だ。
ただの子よ、負けるな、かけろよ。
そしていつかいちどだけ、
自分自身の舞台で、
胸をはってみようじゃないか。
もう奇跡ですらないホールインワンをのぞめ。
投げ方すらわからない一本背負いをのぞめ。
重力さえ無視した五回転ジャンプをのぞめ。
わたしはそういうひとが好きだ。
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