空の循環/霜天
 
いなくなる青の密度が
日増しに高くなっていく
送られる一日の歓声
通勤快速が追い越していく街で
その日もそこに、いることができる


残される人たちは
いつか手にした小箱を
戸棚の上に置くことにして
その日の度に、笑うことに決めている
置き去りにすることがないように
視界を広げる努力をしながら

いつか、夏の隅で
誰もいなくなった四畳半で
影が伸びて、消えていくまでを
指を折りながら待ち続けたことがある
残していく人たちは
そんな余白を埋めることに必死で


そんな
崩れていく空の循環で
涙はどこに行くことが出来るだろう
いなくなる青の一瞬は
こんなにも簡単で
こんなにも、静かだ


いつかの季節の引力で
隠すように手のひらを
翻した人がいる
追い越された街には
いつもより冷たい風が吹いている

その日
電話は結局、鳴らなかった
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