「夕暮れ」/広川 孝治
オレンジシャーベットのような夕暮れの空
濃紺の天頂とのグラデーションが
何万光年の奥行きを塞ぐ
暮れなずむ街で
通り過ぎ行く人の群れの中
一人立ち止まり
誰も手に入れることの出来ない空を見上げ
古今、何万回、何億回と
破棄されては描きなおされ
一度として同じものが生まれたためしのない
夕暮れと言うテーマの絵画を
まばたきのシャッターで保存しようと試みる
生涯で
あと何千回見ることが出来るのだろう
明日も見ることが出来るだろうか
僕に明日は来るのだろうか
今この時を生きている自分を見つめながら
やがて紺の夜空という絵画が空一面に広がるまで
僕はじっと立っていた
戻る 編 削 Point(0)