汲む?茨木のり子さんに?/まほし
 
大人になりたくない と
純粋に逃げ続けた頃は通り過ぎ
大人になれない と
不透明な迷路で行き詰まった頃に
私はあなたの詩にえぐられました


 初々しさが大切なの
 人に対しても世の中に対しても
 人を人とも思わなくなったとき
 堕落が始るのね 墜ちてゆくのを
 隠そうとしても 隠せなかった人を何人も見ました


あなたがかつて見すかされた ことばに
私も見すかされて どきんとしました


大人になってもどぎまぎしたっていいんですね
私は人からよく見える道ばかり進もうとしていたから
かえって自らを迷路に押し込めていた
人は背比べをするものではなく
その違いをいとおしむものであり
そして風は こころを外にむかってひらくほど
たえず違う唄を連れてくる きっと……
あなたの亡くなられた二月の気高い空の下
アンテナをふるふる震わせては
今もなおその意味を
ひっそり汲んでいるのです





(参考作品)
茨木のり子「汲む―Y・Yに―」



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