ogikubo/山田せばすちゃん
き、準決勝で相手チームのライトがフライを後逸したおかげでランニングホームランなんかやらされて、三塁回った頃には足がもつれて転げるようにホームインしたばかりの俺は、息も絶え絶えに「またね」というのが精一杯だったのだけれど。
それからしばらくしてなんだったか忘れてしまったけれど東京へ出かける用事があった俺は池袋のサンシャインプリンスだったかに泊まったのだけれど、池袋と荻窪はどれだけ離れているのか、それとも近いのかも知らないで彼女の携帯に電話したこともあった。その電話はもう使われてはいなかったのだけれど。
それから彼女とは会っていない。チャットルームでも、メッセンジャーソフトでも、彼女は名前を変えたのか、姿を消したのか、今となってはわかりもしないのだけれど。
それからそれからどれくらいかして、俺は「土曜の夜に娘は泣かない」という詩を書いて、山田せばすちゃんという名前になって、そのあとは皆様がご存知の通り、どうにかネットの片隅でヨゴレた詩やふざけた日記なんかを書きながら、こうして日々を過ごしているのだけれど。
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