「静かの海」綺譚(21〜31)/角田寿星
きながら
嘗て師であった 僅かばかりの灰を
幾本かの白い毛髪を
星々にむかって投げた
29
新しい者たちがやって来た
彼らは「もっと遠くを見つめる者」たち
彼らは 昔の写真を眺めない
彼らは 地球を感傷に浸って見つめない
彼らは 心の地平や 雲雀の鳴き声や
谷を渡る微風を語ったりしない
彼らはただ もっと遠くの虚空の声を聴く
――タイタンに恒星間ロケットが建造された
と聞いたのは この直後だった
「もっと遠くを見つめる者」たちは
もっと遠くへ旅立っていった
星々の彼方へ
30
無機質の世界で生きるかなしさ
無機質の世界で生きるよろこび
この両手いっぱいに
31
地球は
美しい しばしの
宝石の眠り
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