指先が感じること/とびまる。
 

この指だけじゃなく僕もだけど

自分の指に触れてみる
自分の指にくちづけをしてみる

思い出す感覚はリアルタイムな実感とは別に
僕の思いが足しこまれて
その時の感覚とはまた別のちょっと違う
感覚になっているような気がして
それは僕だけが知っている感覚で

あまいとかやわらかいとかおいしいとか
五感で表現できるような感覚ではなくて
ちょうど夢を見ているときのような感じがする

もちろん夢ではなくて現実がそこにあったのだけど
過ぎてしまった時間たちはまるで夢のようだというのは
たぶん本当のことだからそう思うのかもしれない
ちゃんとまた現実はやってくるのだけど
夢のような時間を作り出すわけだけど

その時間は通り過ぎていくだけの時間ではなくて
きちんとこうして違う時間を作り出しているんだと
爪を切りながら思っていた

まるで長い長いイントロの曲を聞いているようだ
そしてこの曲は僕もまだ聞いたことがない
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