波/水無瀬 咲耶
砕けなければ
新しく生まれてゆけないのです
緩慢なうねり ではなく
大陸へ押し寄せてゆく
分解できない想い
いつも視ていた空
光は幾度も
しずくを貫いてゆくだけ
けれど 水の分子は
大気に満ちてゆき・・・
海面では境界が混ざりあうのです
風を溶かしこんで
日ごとに豊かになってゆく海
わたしも 青いよ
ひとしずくが光の粒をはらんで
空を閉じこめる
たえず かたちを変え
小さな手を取り歌います
言葉の岸壁を
朗らかに笑いさざめきながら
ゆったりと削ってゆく波・・・
やわらかく砕けることができたのなら
きっとまた はじまってゆけるのです
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