中古の羽根/なつ
 
彼女は
どんな名前よりも
羽根がほしかった

いつも
風に撫でられる感覚
風をきって、両手がすべりゆく瞬間に
あこがれていた

それでも

わたしは天使のにおいがしないから
真っ白なつばさなんて似合わない
灰色で 古ぼけた 
中古の羽根でじゅうぶんなんだ、と

苦笑まじりでつぶやいた


あいまいな物語より、強く
願いは
いのちの輪郭を成している

願いとしての
質量ももたないまま
たくさんのとうめいな
糸、のように


「翼をください」を 
すこし替え歌しながら
口ずさむ彼女は

すごく綺麗で、
確かに
空に近い場所にいるのに

どうして
見かけるといつも
すこしだけ、焦ってしまうのだろう


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