歯ブラシとTシャツと/湾鶴
 
にもナンカありますね。」と
好奇な口ぶりで、
すほん、と蓋を開けた。

その軽々しい音が
妙にリアルで、たまらなく嫌だった。
「歯磨き粉でも、入っていたのかい?」

「いえ、Tシャツですね。それもギッシリ。」
桜紙に包まれた 白いTシャツ 幾重にも。

「なんだか、キモイっすね。」

その声の外で 
そう
ようやくわかった

彼女は、どこにも行く気はなかった
いや、どこにも持って行く気がなかった

「これが、僕の探していた彼女だよ。」
「歯ブラシとTシャツが?」

そう 骨と皮、綺麗な所だけを
僕に残していったんだ。

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