歯ブラシとTシャツと/湾鶴
そこに入るべくして、入ったかの如く
キチリと仕舞われていた
トランクの中身。
交互に並べられた歯ブラシ、206本。
一本一本、薄い渋紙で丁寧に包んで、
その、・・・。
歯ブラシは何故か、白くて薄いプラッチック製の
モノしかなく。
後輩の大和煮くんは、
「やっぱり安いやつ、選んだのかな。」
と、毛先を見つめながら 妙に納得していた。
長い旅にでも、出ようと思ったのだろうか
毎日、歯ブラシを包みながら、
電車に揺られる自分を思いながら。
トランクは二段式だった。
僕は見たくなかった。
こういうのを、予感とでも言うのだろうか。
大和煮くんは「お、ここにも
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