鏡の世界/炭本 樹宏
鏡でできた世界から招待状がきた
どんな世界?
そこは全てが自分で埋まっていた
すきまなく
右手を動かせば全ての自分は左手を動かし
にこりとほほえめば
ぶすっとおこった顔だらけになる
寝ると起きて
起きると寝て
しばらく鏡の世界にいるうちに
僕は精神薬なしではいられなくなり
日増しに気が狂っていった
意識が朦朧とするなか
もう この世界では生きていけないと悟った
そして
心の奥の奥まで見せられたとき
ついに生きることができなくなった
深い眠りのなか
本当に恐ろしいのは自分だったんだと
気付いているのだった
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