妻へ/佐野権太
 


口を薄く開けたあどけない寝顔も

わずかに覗かせてた大きな前歯も

何だかんだ言っても
僕を好きと言ってくれる君が好き

「愛してる」なんて全面降伏で嘘っぽい言葉より
「好き」という言葉が好き








「やめとけ」って言ったのに
チャーシュー麺が待ちきれなくて
チャーシュー丼を追加注文して
気持ち悪いといいだす始末の君が好き

「いくらしたとおもう?」
って60円で手に入れた大根を
さんざん自慢したあげく抱きしめて
神様にまで感謝するほど幸せに浸ってしまう君が好き

車の運転中に「ガムちょうだい」と言うと
丁寧にとぐろを巻いて
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