「ハーメルンの笛吹き」のこと/竜一郎
 
だろう。
村長はいわば「家族を導くもの」、「ひとを守るもの」だとしよう。
笛吹き男は「社長」や「暴力団」にでもしておこう。
無理難題を衝きつけ、破られることを承知で、問題を解決する。
ネズミと笛吹き男は仲間であり、村長はまんまとだまされる。

 絵空事だ、とあなたは語るかもしれない。
しかし、いまの日本の、世界の現状を見て
笑い飛ばすのは早計だと言いたい。

 わたしたちは村長を何とみなすだろうか。
のろまな者と、過去の遺物と評するだろう。
時代錯誤なものを守り続ける、アホウだ、と。
もちろん、村長にも非はある。
笛吹き男(短絡)を求めたのだから。
しかし、それしかなかったからなのだろう。
村長は村民を守るためには、選択するしかなかった。
たとえ、子どもが連れ去られることになるかもしれなくとも。

 後戻りできなくなるまで、あと数歩のところまで来ている。
経済の、格差の「二極分化」は止まらず、
カウンターカルチャーは消え失せた。
すべての人が、「ペスト」を知り、
物語を紐解き、先人の言に
耳を貸すのも必要ではないのだろうか。
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