青い風景/はな 
 

気の早い春一番は 潮鳴りのようなおとを立て
町の上空をゆくのでした
「僕ら、結婚するかな」
彼が昨夜言ったことばが、洗っていたおさらから急に飛び出してきて、ひっこめるのに苦労しました。わたしはまだ十九で、彼はとても純粋な目をしている人でした。わたしは彼がどんな結婚をしていたのかを知らないし、夫婦ってどんなものなのかを、知りませんでした。彼は何を考えているのだろう、と思いました。そしてすぐに、何も考えてはいないのだと気がつきました。何しろ、CDはベスト盤を買っておけばまちがいないと思っている人です。朝が来る度、わたしは彼のことばを思い出しました。



{引用=よこなぐりの朝が

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