風船とフキダシ/竜一郎
 
さまざまな声が飛び交って
あちらこちらに振り回される
少年時代を送りましたと
隣のガキンチョが報告に来た
頭に二発チョップをかまし
「おかえりなさい」と言ったら
あれおれもこんなこと言われた覚え
あるぞと思い出したときに
隣のかかぁがこらーと説法しに
きたので家に入ったら
そこには一匹のゴールデン・レトリバー
にマケズオトラズふさふさした猫がいた
三毛猫のダンデライオンって言うんですよ
と妹がおれに挨拶した
「知ってるわ、そんなこと」と
夏目漱石小説に出てくるお嬢様ばり
に挨拶返すと、ため息ひとつ
宙に浮かんで雲になって
空飛びバルーンだ! と
フウセン伯父さんが叫んだ
のは、漫画によくあるフキダシってアレ
星の王子に質問されそうだな、
「これなんでしょう?」
アクビが一つ出た
ところで隣のガキンチョがまたきて
目は見えないんだよ?、とか言って帰っていった
せいで一晩俺は本を一冊読み明かした
それの季節は夏だった
茹だる暑さの中で俺は。
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