ヒマワリ/竜一郎
就職希望の欄に「なにもいらない」と少女は書いた。
彼女はそれからほんとうに何も欲さなかった。
その分、同級生の私たちが困惑したのは、
何かをしないことも、あるいは何かをすることをも
彼女が要請していないようだったから。
彼女は次第に黄色くなったり緑色になったりして
お終いにはヒマワリになってしまった。
私はそれを家に持ち帰って飾るような真似も
校庭の花壇にひっそりと咲くように植え替えて
あげることもしないままに、そこに在るようにした。
いまでは廃校になった教室の彼女の席に
そのヒマワリが植わっているわけではなく、
折り取られ、焼かれ、彼女の一家の墓石に
灰となって
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