物語の合間/石川
 
焼かれたパンのような
頬をして笑うんだね
港町の子供たちは
早朝に古木を集めて夢を燃やす
パチパチとはぜる音に
黄色いバターの香りがする

優しい横顔をもつ女の人が
窓辺でオレンジをむいている
物語がおわりをむかえるころ
海がすっかりかわくころ
思い出を捨てて
ピアノを捨てて
古い体に旅をさせたら
もどってくる人のために

僕はそれを絵に描き
フライパンに満月を落とし
紅茶を飲み干した

それから眼をつむって
魚のようにじっと
僕と僕らの海のことをおもった



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