『ゲド戦記』と『指輪物語』(書評)/竜一郎
『ゲド戦記』、読んだことはあるだろうか。
一巻目は傑作だと、私は信じている。
副題は「影との戦い」である。
主人公であるハイタカことゲドが、影から逃げ回る話だ。
なぜ戦わないのか? 勝てないからだ。
なぜ勝てないのか? 化け物だからだ。
ひとである身のゲドは、影が何であるのかわからなかった。
だから、戦うことなどもってのほか。逃げるしかない。
『指輪物語』では、主人公は光のある世界では姿を隠し、
闇の支配する世界を覗きえる指輪を手にしたが
それは決して力を与えてくれるものではなかった。
指輪を嵌めたときに見えるものは、大きな爛々と輝く目であった。
「怪物と戦
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