言葉のこと/竜一郎
 
ことだった。
 しかし、私たちは書くことから、支配することを知ってしまった。言葉は、この二つだけで良かったのに。書かれたものは支配の言語を帯びる。字そのものが、誤りを含むからだ。

 安藤昌益は『自然真営道』の「大序」にこう記している。

  「家を作るに必ず杭をもってす。この家は失(あやま)りなり。
  改めて作らんと為(す)るとき、杭を抜きて家を毀つに、
  その杭抜けざるときは、必らず新杭をもつて古杭を抜きて、
  以つて失家を改む。今予が綴る所の書は新杭なり。
  古書家の失りを改むるに、その失りの字を抜くに、
  乃ち字を用いて之れを改む。
  古書盗乱の根を破却し
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