[ 思い出列車 ]/渕崎。
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
一両編成の小さなトロッコ列車が
蒸気を噴出し、電線の上を走っています
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
煤けた窓から見えるのは
一人ばかりの乗客の、記憶のページばかりです
『この度は、ご乗車ありがとうございます』
ひび割れた声が、何処からともなく振ってきて
ゆっくりと列車の外の風景を説明し始めます
一人ばかりの乗客が、窓の外を眺めてポツリと呟きました
「何も、見えないじゃないですか」
『いいえ、これから見えるのです。今までの記憶は胎内の記憶なのです
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