死神と私 −蛍の光−/蒸発王
 
に止まると
アゲハの身体から虹色の煙が少しだけ出ました
蛍がその煙を吸い込むと
お尻の光がさらに輝き出します



蛍は死神の同僚で
死んだ虫の魂をあつめているそうです
集めた魂のぶんだけ蛍の光は大きくなります
そして限界まで光を大きくすると
自分も死んで集めた魂も一緒につれていくので
蛍の命も短くできているそうです


光を大きくした蛍は
死神の前で一回転すると
夜空の向こう側へ次の魂を探しに行ってしまいました
死神はしばらく空の向こうに手を振り
私も涙目の息子の肩を抱いて夜空の向こうを眺めました


話はこれで終わりません
息子の昆虫採集への情熱は
生命の神秘をうけてますます燃え上ったようで
あいからず虫を捕っては涙しています
そして
今日も携帯を取り出すと


“かえりみちでほたるをとってきてください”

という死神のメールが入っているのです




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